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優先席について‐優先席付近では携帯電話の電源を切るべきなのか。

 電車ではよく、「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください。それ以外の場所ではマナーモードに設定し、通話はお控えください。皆様のご協力をお願い致します。」などというアナウンスが流れる。このアナウンスは携帯電話がペースメーカーに誤作動を生じさせる恐れがあるという配慮からなされているようだ。自分は実際に「ペースメーカーを付けてるので携帯の電源を切ってください」と優先席で言われたこともあった。

 しかし、総務省による「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」における調査において、2012年7月、電波の出力が強い「第2世代(2G)」と呼ばれる携帯電話のサービスが終了となったことを受けて、「第3世代(3G)」の携帯電話を使って再度ペースメーカーへの影響を調査した結果、3センチ以上離れていれば影響がないことが判明し、2013年1月に距離指針を22センチから15センチに緩和している。ペースメーカーも改良されて、電波の影響を受けにくくなっているという。

 しかも、「優先席付近」での携帯電話の使用に限って考えるというのもおかしな話である。果たしてペースメーカー使用者は全員優先席に座ることができるのだろうか。特に混雑時には、優先席までたどり着ける可能性は低くなるだろう。となれば、優先席付近だけを配慮するというのはあまりに杜撰である。対策として考えるとすれば、「優先席付近」かどうかに関わらず、「混雑時」にはあらゆる場所で携帯電話の電源を切るということになるだろう。問題は「優先席付近」かどうかではなく「距離」なのである。「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」という「優先席付近」に限定したアナウンスは、ペースメーカー使用者は全員優先席に座ることが出来るという前提がなければ意味のあるものとして成立していない。更に言えば、優先席「付近」と言ったところで、個人の主観でしか判断がなされない。

 鉄道事業者側は「万が一」そのアナウンスを廃止してペースメーカーが誤作動を起こしたりなど、何らかの事故が起こったりした場合に責任を取らなくて済むように「一応」アナウンスしているだけであろう。本当に「携帯電話の電波が危険」だと考えているのであれば、携帯電話の所有者とペースメーカーの利用者は、完全に車両を分けたりするなどして、絶対に携帯電話所有者と一緒に乗り合わせることがないような状況を構築する必要がある。しかもこれは、男性にも乗る権利があるとされている「女性専用車両」のように曖昧なものではなく、完璧なものでなければならない。誰もが乗り合わせることができる場所で「皆様のご協力をお願い致します」と言っているだけでは意味がない。

 現に優先席付近で少なくない人が携帯電話を使用するし、電源を切る人などおそらくほとんどいない。それに対して、「悪影響がない」にも関わらず「悪影響がある」と思い込むこと自体がペースメーカー使用者にとってはよくないことだろう。そこで「携帯電話の電源を切れ」と説教を始めたりしてもどうにもならない。大事なことは、携帯電話が危険なものであると思い込まないことと、アナウンスを気にしないことである。変にコミットしたところで、全ての乗客にとって何の利益もないだろう。